東京高等裁判所 昭和30年(ネ)805号 判決
次に、控訴人は、本件手形は受取人株式会社村瀬商店に対する融通手形であつて、同会社に対して支払義務なく、被控訴人の前者川上商事株式会社及び加藤一夫はいずれも右事実を知りながら本件手形を取得した者であり、被控訴人は右加藤一夫から期限後裏書により本件手形の裏書譲渡を受けた者であるから右村瀬商店に対する事由をもつて被控訴人に対抗する旨抗弁し本件手形が村瀬商店に対する融通手形である事実は前記乙第三号証及び松岡豊三の証言によりこれを窺いしることができるけれども、元来融通手形なるものはその受取人たる被融通者をして自己の信用を利用せしめ金融を得せしめるものであるから、特段の事由のない限り被融通者に対しては支払義務がないものであるけれども、それだからといつてその事の故のみをもつて、またその事を知るの故のみをもつて、その後の手形取得者に対しその支払を拒むことのできないことは論をまたないところであるから、控訴人の右抗弁はそれ自体理由がない。
(大江 草間 猪俣)